「抄録の締め切りが近いから、とりあえず先に出しておこう。」
「スライドは採択されてから考えればいい。」
そう考えて、抄録だけを先に仕上げていませんか?
私も長いあいだ、この順番で準備をしていました。そしてスライド作成の際、内容変更が必要となり、県士会の症例発表や学会で、発表の冒頭で「最初に訂正があります」と伝えるハメになりました。
こうなると、発表する時間も減り当日の発表で焦ってしまうことがあります。
この記事では、症例報告の抄録の書き方を例文つきで紹介しながら、抄録とスライドは同時に作るのが正解だと言い切れる理由と、その手順をお伝えします。
・抄録を先に書いてスライドを後回しにすると、数値や考察の方向にズレが生まれやすい
・抄録とスライドは、同じ設計図から「骨組み」を同時に作るのが正解
・抄録の見出しはそのままスライドの見出しになる。数値と図表は提出前に確定させる
・文字数は1文字も超えない。提出前に骨組みと突き合わせる
抄録を先に書くと起きる失敗

抄録を提出してから、スライドに取りかかる。締め切りに追われていると、この順番がいちばん自然に感じますよね。
ただ、演題登録から発表当日までは数か月空くことも珍しくありません。抄録とスライドを別々に作ると、ズレはほぼ確実に生まれる――その理由と、失うものを整理します。
| 比較の軸 | 抄録を先に出す | 抄録とスライドを同時に作る |
|---|---|---|
| 数値のズレ | スライド作成時に見つかりやすい | 提出前に確定するので起きにくい |
| 考察の方向 | 後から変わりやすい | 骨組みの段階で固まる |
| 指導者の添削 | 抄録とスライドで最低2回 | 骨組みを見せて1回で確認できる |
| 発表の冒頭 | 「訂正があります」から始まることも | そのまま本題に入れる |
| 抄録の中身 | 仮の結論のまま出しがち | スライドで見えたことまで書ける |
抄録とスライドがズレる理由
ズレの原因は、考えが深まるタイミングが抄録とスライドで違うことにあります。
抄録を書く段階では、評価の数値を並べておおまかな結論を置いた状態がほとんど。ところがスライドを作り始めると、グラフにした途端に見え方が変わったり、文献を読み直して解釈が変わったりすることが多いです。考えが本当に深まるのは、スライドを作る段階なんです。
つまり抄録を先に確定させると、そのあとに深まった考えとの間に差が生まれてしまう。誰にでも起こりうる、準備の順番の問題です。
| 時期 | やること | ズレが生まれるポイント |
| 演題登録(抄録提出) | 評価と結果を並べ、仮の結論を書く | この時点の解釈で文章が固まる |
| 採択後〜スライド作成 | グラフ化や文献の読み直しをし、深く考える | 数値の誤りや新しい解釈に気づく |
| 発表当日 | 抄録集を読んだ聴衆の前で話す | 抄録と発表内容の差が表や考察に出る |
発表直前の「修正があります」で失うもの
聴衆の多くは、抄録集で内容を確かめてから会場に来ます。だから発表の冒頭で抄録と違うことを伝えると、最初の印象がそこで決まってしまう。冒頭の訂正は、持ち時間と信頼を同時に削ることになります。
私はこれまで県の理学療法士会の症例発表や、回復期リハビリテーション病棟協会の研究大会で発表し、通算17回ほど学会発表をしてきました。当時は、抄録を先に提出してからスライドを作るという順番です。
その結果、スライドを作る段階で結果の数値が変わったり、考察の方向性が変わったりしたことがありました。
数値が違っていたときは、発表の冒頭で「最初に訂正があります。抄録では〇〇でしたが、スライドの方が正しい値となっています」と伝えています。一方で、考察の方向性が一部のみ変わったときは訂正を入れず、ある程度整合性を考えながら発表しました。
しかし、聴衆が抄録をしっかり読み込んで発表を聞いている場合は、きっと内容の違いに戸惑いを与えたことと思います。
このような小さなことでも、信頼できるデータかどうかという面では、重要なことになります。
数値の訂正なら一言で済みます。
しかし、考察の方向性が変わったことは、一言では説明しきれません。

抄録って、出したらそれで終わりだと思ってたよ……。

出した抄録は、当日みんなが読んでから聞きに来るからな。
そこと違う話をしたら、最初の一言が訂正になってまうで。発表時間も限られてるから、もったいない。
指導者の時間も二重に使ってしまう
見落としがちなのが、指導者の負担です。抄録とスライドの添削を数か月あけて別々にお願いすれば、上司は同じ症例を二度読み直すことになります。
医学書院の医学界新聞でも、指導する側は診療や自分の学会準備で忙しく、締め切り直前には十分な指導を受けにくいと指摘されています(参考:医学書院 医学界新聞「抄録の作り方のHow to」2021年)。
抄録とスライドの骨組みを一緒に見てもらえば、添削はほぼ一度で済み、途中で方向性がズレることも少なくなります。添削を一度で済ませる段取りが、指導者への一番の配慮になります。

確かに、何回も添削をお願いするのって気が引けるんだよね。

せやろ。抄録とスライドを提出して、一回で見せられる形にしといたら、そのぶん中身をじっくり見てもらえるで。
指導者だけが大変な思いをしているのでしょうか?実は、発表者にとってもデメリットがあります。
発表者もフィードバックが増えて大変
抄録とスライドを作成し、指導者に見てもらうと何度も修正を行い、無限にフィードバックがくるということも珍しくありません。
やっとの思いで完成した抄録。提出後にスライドを作ってみたら、抄録から方向性を変えないといけないとなると……。
抄録で受けていたフィードバックの時間が無駄となり、またスライドで指導者から何度もフィードバックを受けて修正をするハメになります。
これでは、発表者も学会発表自体が嫌になってしまうかもしれません。
では、ズレを生まないためにどう進めればいいのか。同時進行の具体的な手順を見ていきましょう。
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抄録とスライドを同時に作る手順

同時進行と聞くと、両方とも完成させる大変な作業に思えるかもしれません。
でも実際にやることは、抄録の項目ごとにスライドの骨組みを用意し、それを見ながら文章を起こしていくだけです。実際にスライドを見て発表する内容を考えながら作ることがポイントです。
完成品ではなく、骨組みを同時に作る。この発想に切り替えるだけで、あとからの修正はぐっと減ります。
最初に「伝えたい軸」を一文で決める
骨組みを作る前に、この発表で何を伝えたいのかを一文で書いてみてください。先ほどの医学界新聞でも、一つの発表で伝えるメッセージは一つが原則だとされています。
たとえば「歩行時の膝折れに対して〇〇のアプローチを行い、△△の変化が得られた。その背景には□□があったと考えられる」といった一文です。軸が一文で書けないうちは、抄録もスライドも書き始めない。遠回りに見えて、実はこれが一番の近道になります。
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抄録の項目ごとにスライドの骨組みを作る
次に、抄録の見出しに合わせてスライドの枠を用意します。たとえば日本運動器理学療法学会の演題募集要項では、症例報告の抄録を「症例紹介」「評価とリーズニング」「介入内容と結果」「結論」「倫理的配慮、説明と同意」の順に構造化するよう求めています(参考:第5回日本運動器理学療法学術集会 演題募集要項)。
この並び、症例発表スライドの流れとほとんど同じだと思いませんか。抄録の見出しは、そのままスライドの見出しになる。最初から両方を並べて作れば、ズレようがないわけです。

| 抄録の項目 | 対応するスライド | 同時に決めておくこと |
| 演題名 | タイトルスライド | 軸が伝わる言葉 |
| 症例紹介 | 症例紹介(1〜2枚) | 載せる基本情報の範囲 |
| 評価とリーズニング | 評価(2〜3枚) | 使う評価指標と数値 |
| 介入内容と結果 | 介入・経過(2〜3枚) | 変化を示すグラフの形 |
| 結論 | 考察・まとめ | 軸の一文 |
| 倫理的配慮、説明と同意 | タイトル直後など | 同意取得の方法 |
この段階では、評価なら「使う指標と数値」、経過なら「グラフの形」が決まっていれば問題ありません。
数値と図表は提出前に確定させる
骨組みの中でも、抄録の提出前に必ず固めておきたいのが数値と図表です。ここが後から動くと、抄録との食い違いがそのまま「訂正」になってしまいます。
抄録に書いた数値は、スライドでも一字一句同じにする。そのためにも、数値は先に表やグラフの形でまとめておき、抄録はそれを見ながら書くのが確実です。
失敗を経験してから、抄録とスライドを同時に作るようにしました。
二つ同時進行で作ることで、抄録に書くべき内容とスライドで見せるべき内容を、切り分けて考えられるようなりました。そして、抄録とスライドの整合性が取れやすくなりました。スライドを作る段階で考察の方向性がズレることも、なくなっています。
もう一つ変わったのは、抄録の内容そのものを濃く、深く書けるようになったことです。

え、同時に作ると抄録の方も良くなるんですか?

そうやねん。スライドで見えてくることを、先に抄録に書けるからな。
学会発表に慣れてない場合は、難しいと思うけど実際にやってみることが秘訣やな。
一人で抄録を書き、発表の冒頭で訂正し、またスライドで一から直される。この繰り返しで失うのは時間だけではありません。
本来なら1回の発表で身についたはずの『考察の組み立て方』まで、毎回やり直しになってしまいます。
骨組みの段階で見てくれる人がいる職場かどうか、一度だけ内情を知るエージェントに確かめてみてください。
相談は無料です。
手順が見えたところで、次は抄録本文の書き方です。
症例報告の抄録の書き方と例文

学会の抄録は、学会ごとに構造や文字数が決められています。書き始める前に、まず募集要項で指定された構造に必ず従うことを確かめてください。
症例紹介・評価・介入と結果・結論のように見出しで区切る形式を構造化抄録と呼び、理学療法系の学会では広く使われています。
ここでは症例報告の一般的な構造に沿って、書き方と記載例を紹介します。
演題名と症例紹介の書き方
演題名は、抄録集で最初に目に入る部分です。大阪府理学療法学術大会の手引きでも、内容を想起できる演題名にし、略語や抽象的な表現を避けるよう示されています(参考:第34回大阪府理学療法学術大会 学術局「抄録作成の手引き」)。演題名で、読んでもらえるかどうかが決まると考えておきましょう。
| 惜しい例▲ | 伝わる例⭕️ | 違い |
| 脳卒中患者の歩行について | 歩行時の膝折れを呈した脳梗塞片麻痺例に対する踵接地時の体幹の位置に着目した歩行練習 | 何に着目したかが見える |
| TKA術後のROM改善 | 人工膝関節全置換術後の屈曲制限に対し〇〇を併用した一例 | 略語を避け、対象と介入が具体的 |
症例紹介は、全体像がつかめる最低限の情報に絞ります。診断名、経過、主訴、そしてこの症例のどこに着目したのか。
軸に関係しない既往歴まで書くと、それだけで文字数が埋まってしまいます。
評価と介入・結果の書き方
評価は、できるだけ客観的な数値で書きます。そのうえで、なぜその問題点に着目し、なぜその介入を選んだのかという流れが見えるようにする。評価から介入までの思考過程が読み取れるように書くことが、症例報告の抄録の要です。介入内容と結果は変化を時系列で示し、何がどれだけ変わったのかを数値で書くと説得力が増します。
用語にも気を配りましょう。先ほどの日本運動器理学療法学会の要項では、「訓練」は学術用語としてふさわしくないとして、抄録での使用を控えるよう求めていました。

評価はたくさんやったから、全部書いた方がいいんだよね?

抄録は文字数が決まってるからな。軸に関係ない評価は入れへんでええ。
スライドも同じやで!スライドにびっしり関係ない評価内容まで書いてたら聴衆もどこのこと言っているかわからんくなるからな。
削ったぶんは、質問されたときに答えたらええねん。

でも、関係ある評価が何か、何と関係しているかが、よくわからないんだよね。

そういう時は、白紙の紙に図式化して書いていくのがいいで。
頭の中で考えるだけでは限界があるから、いつもそうして思考を整理してるで。
さっき、例にもあった「歩行時の膝折れを呈した脳梗塞片麻痺例に対する踵接地に着目した歩行練習」で思考方法の一部を紹介するで。
例)「歩行時の膝折れを呈した脳梗塞片麻痺例に対する踵接地時の体幹の位置に着目した歩行練習」

結論と倫理的配慮の例文
結論には、最初に決めた軸をもう一度はっきり書きます。
医学界新聞でも、よくある定型文で締めくくる抄録は魅力が伝わりにくいという趣旨の指摘がありました。「若干の文献的考察を加え報告する」で締めない。何がわかったのかを、自分の言葉で書き切ってください。
倫理的配慮には、対象者に説明して同意を得たこと、個人が特定されないよう配慮したことを明記します。書き方の例を2つ挙げておきます。
例1:本報告にあたり、症例には趣旨を口頭および書面で説明し、同意を得た。
例2:本報告はヘルシンキ宣言に基づき、症例に趣旨を説明し書面にて同意を得た。〇〇病院倫理審査委員会の承認を得ている(承認番号:〇〇)。
スライドへの書き方は、症例発表スライドの記事で紹介しました。
抄録とスライドで表現を揃えておけば、ここでもズレを防げます。
【症例紹介】70歳代男性。脳梗塞により右片麻痺を呈し、発症から約1か月で回復期リハビリテーション病棟に入院した。病棟内の歩行で麻痺側の膝折れがみられた。
【評価とリーズニング】Brunnstrom stageは下肢Ⅳ、10m歩行は〇〇秒。膝伸展筋力の出力タイミングの拙劣さに加え、踵からの接地が不十分なことが膝折れに関与していると考えた。
【介入内容と結果】踵からの接地時、体幹の位置関係に着目した歩行練習を4週間実施した。膝折れの頻度は減少し、10m歩行は〇〇秒に短縮した。
【結論】本症例の膝折れには、膝伸展筋の出力のタイミングに加え、踵接地時の体幹との位置関係が関与している可能性が示唆された。
【倫理的配慮、説明と同意】症例に本報告の趣旨を説明し、書面にて同意を得た。
※架空症例による要約版です。
実際は学会の指定する構造と文字数に合わせて、より詳細に記載してください。
書き上げたら、提出の前に必ず確認しておきたいことがあります。
抄録の文字数と提出前チェック

抄録で意外とつまずきやすいのが文字数です。上限を超えると受け付けてもらえない学会もあります。文字数の上限は、1文字でも超えない。
そのうえで、数え方と削り方、提出前の最終確認を押さえておきましょう。
抄録の文字数の数え方
文字数の数え方は、学会によって違います。たとえば日本理学療法教育学会の第8回学術大会では、症例報告の抄録を1500字以内とし、日本語は全角で数え、半角英数字は2文字で1文字に換算するルールでした(参考:第8回日本理学療法教育学会学術大会「抄録入力時の注意」)。
数え方は学会ごとに違うので、前に出した学会のやり方をそのまま当てはめないでください。
Wordの文字カウントは便利ですが、半角英数字の換算まではしてくれません。

Wordで数えたらぴったりだったのに、登録したらオーバーって出て焦ったことがあった。

それ、半角の数え方が原因のことが多いで。
登録画面に文字数の表示があるなら、最後にそっちでも確認しとくと安心やな。
文字数オーバーの削り方
文字数を削るときは、順番を決めておくと迷いません。
先に削るのは症例紹介の背景、次に並べすぎた評価、最後に言い回しの重複です。削るのは結論以外からと覚えておいてください。

| 削る前 | 削った後 | ポイント |
| 歩行練習を実施したところ、歩行の安定性に改善が認められる結果となった | 歩行練習により、歩行の安定性が改善した | 回りくどい言い回しをまとめる |
| 〜と考えられることが示唆された | 〜が示唆された | 重なった推量表現を1つにする |
結論まで削ると、一番伝えたいことが残りません。
意味が通るところから落としていくのがコツです。
抄録提出前のセルフチェックリスト
抄録提出ボタンを押す前に、もう一度だけ見直す時間を取ってください。
このとき、スライドの骨組みと突き合わせるのが最大のポイントです。
□ 抄録の数値が、スライドの骨組みの数値と一致している
□ 結論が、最初に決めた軸の一文とずれていない
□ 募集要項で指定された構造と見出しに沿っている
□ 文字数を、その学会の数え方で確認した
□ 倫理的配慮と同意について記載した
□ 略語や指定外の用語を使っていない
引っかかる項目があれば、直してから提出しましょう。
この数分が、発表当日の訂正を防いでくれます。次は、初めて発表する方に向けたポイントです。
新人発表の抄録で押さえること

県士会の新人発表は、多くの人にとって初めての学会発表です。
抄録もスライドも手探りのまま、締め切りを迎えることになりますよね。
だからこそ、新人発表では同時進行の効果が大きいと私は考えています。兵庫県の例をもとにお伝えします。
兵庫県の新人発表の抄録の特徴
私は兵庫県の新人発表で、これまで3人の新人を指導してきました。
マンツーマンの指導員として関わったこともあれば、チームリーダーとして関わったこともあります。
抄録の文字数や構成は、県士会が定める規定どおりに作成する必要があります。
抄録の締め切りは、私が関わっていた当時は10〜11月ごろだったと記憶しています。
症例は7〜8月には決めて、評価を取りながら新人と方向性を決めていきます。
スライドは、できれば同時進行が望ましいですが、1年目からいきなりそれは難しい場合もあります。その場合は、指導者がスライドの形を見越して指導する必要があります。
発表当日にUSBに入れて持参し、会場で提出する形式でした。
※現在は、各支部ごとにオンラインで新人発表を行っています。
詳細は、一般社団法人 兵庫県理学療法士会HPの各支部新人発表をご参照ください。
【新人発表までの流れ(兵庫県で指導していた当時の目安)】
7〜8月 症例を決める
↓ 「何を発表したいか」「どんな評価を取るか」を指導者と確認
評価と並行して、抄録とスライドの骨組みを作る
↓ 骨組みの段階で指導者に1回目の確認
10〜11月ごろ 抄録の締め切り(提出前に2回目の確認)
↓
発表の2週間前 予演会
↓
発表当日
締め切りの時期や提出方法は、年度・支部によって変わる可能性があります。最新の募集要項で、締め切りと提出方法を必ず確認するようにしてください。
新人がつまずきやすいポイント
新人発表の指導で、いちばんよく見てきたつまずきは、評価が足りないために考察が浅くなってしまうことでした。
考察は、評価で集めた材料をもとに組み立てるものとなります。
材料が少なければ、どれだけ文献を読んでも踏み込んだ解釈はできません。
考察の浅さは、その手前の評価不足から来ていることが多いのです。
新人発表で一番苦労するのは、必ずと言っていいほど「評価不足」が生じることです。
指導者の立場から、新人の症例が決まれば、新人にこれを聞いてください。
□この症例の何について発表したいのか?
□どんな評価を取ろうとしているのか?
症例が決まったら、「ボトムアップでいいから評価しておいてね。」は後で必ず泣きを見るのでやめた方がいいです。
新人が何について興味を持っているのか、評価についてどこまで考えているのか。
これを一緒に確認することが、抄録やスライドをまとめる時に発表者も指導者も困らないための秘策となります。
指導者の助言があり、抄録とスライドを同時に作ると、骨組みの段階で「この考察を言うには、この評価が足りない」と気づけます。
担当しているうちなら、追加で評価できる場合もあるでしょう。

考察が浅いって言われても、何を足せばいいのかわからないんだよね……。

考察を足す前に、評価を見直してみることやな。
言いたいことを支えるための評価と数字が足りてるか。
そこは指導者と密にコミュニケーションをとっていく必要があるで。
そこが埋まったら、考察は自然と深くなるで。
指導者に見てもらうタイミング
指導者に見てもらうのは、骨組みの段階で一度、抄録の提出前にもう一度の計2回が目安です。
見てもらうのは骨組みの段階が最も効率的です。文章を書き込む前なら、方向性のズレも直しやすくなります。
発表が近づいたら、予演会も予定に入れておきましょう。
□実際の発表原稿を本番さながらに時間を計る
□聴衆からの質問は全てメモし、本番に備える(本番でも同じような質問が出やすい)
□質疑応答も「ご質問ありがとうございます。」と伝えて本番同様に質問に答える練習をする
修正の時間も含めて、発表の2週間前をひとつの目安にしておくと慌てずに済みます。
【あわせて読みたい】
聴衆からの質問に備えたい方にとって参考になる記事です。
▷「学会発表ボコボコを守りに変える準備術—スライド・原稿・想定質問」
残った疑問は、Q&Aで解消しておきましょう。
よくある質問(FAQ)

よく聞かれる質問をまとめました。迷ったときは、最後は必ず募集要項に立ち返る。
これが一番確実な答えになります。
- Q症例報告の抄録は何文字で書けばいいですか?
- A
ヤマ学会の規定しだい。
上限も数え方も学会ごとに違うから、まず募集要項を確認してな。
半角英数字の換算まで要チェックするんやで。
- Q抄録を提出したあとに内容を変えてもいいですか?
- A
ヤマ締め切り後は直されへん前提で準備が必要。
修正期間の有無は学会しだいや。数値が変わったときは、発表の冒頭で正直に訂正するのが誠実な対応や。
そもそもズレを出さへんよう、最初から同時に作るのがいちばんやな。
- Q抄録の倫理的配慮はどう書けばいいですか?
- A
ヤマ説明と同意、個人情報への配慮を書く。
対象者に趣旨を説明して同意を得たこと、個人が特定されへんよう配慮したことを書こう。倫理審査を受けてるなら承認番号も入れとくとええで。
詳しくは上記の倫理的配慮の例文へ
- Q新人発表の抄録は誰に見てもらえばいいですか?
- A
ヤマまずは指導担当の先輩や上司。
骨組みの段階と提出前の2回以上見てもらうのが理想や。
できれば、1週間おきに、進捗も含めて相談しておくと、評価漏れも無くなるはずやで。
職場におらへんときは、発表経験のある他部署の人に相談するのもありやで。
- Q抄録の準備はいつから始めればいいですか?
- A
ヤマ締め切りの2〜3ヶ月前
締め切りの2〜3か月前には症例を決めときたいな。兵庫県の新人発表を指導してたときは、締め切りが10〜11月ごろで、症例は7〜8月に決めてたで。
評価を取りながら骨組みを作る時間が要るから早い方がいいけど、評価に必要な準備もそれまでにしといた方がいいで。
- Q抄録のキーワード欄には何を書けばいいですか?
- A
ヤマ疾患名・着目した動作・介入の中から選ぶ
キーワードの入力を求める学会もあるで。疾患名・着目した動作・介入の3つから選ぶと、軸とずれにくいで。
数や形式は学会ごとに決まってるから、募集要項を確認してな。
- Q症例報告と研究報告で、抄録の書き方は違いますか?
- A
ヤマ構造が違うから書き方も異なる
構造が違うで。
症例報告は症例紹介から始まるけど、研究報告は目的・方法・結果・考察の順になるのが一般的や。募集要項で、どっちの形式で出すのか最初に確認しとこな。
- Q抄録が不採択になることはありますか?
- A
ヤマ最近は少なくないが、ある
学会によってはあるで。指定の構造に沿ってない、文字数オーバー、倫理的配慮の記載漏れは、内容以前に指摘されやすい。
でも、提出前のチェックリストで防げるものばっかりやからどんどん挑戦していこな。
【あわせて読みたい】
学会発表を後押ししてくれる職場かどうかは、費用の扱いにも表れます。
▷学会発表が「出張」になる職場と「自己研鑽」で終わる職場の差
抄録もスライドも一人で抱え、当日の訂正も一人で背負う。それを繰り返すと、得られるはずだった学びまで目減りしていきます。
骨組みの段階から一緒に考えてくれる人がいる職場では、一回一回の発表が次につながっていきます。今の環境が当たり前だと思う前に、ほかの職場の教育体制を一度のぞいてみてください。
眺めるだけなら無料です。
まとめ|抄録とスライドは同時に作る

最後に、この記事のポイントを整理します。
◆抄録を先に出してスライドを後回しにすると、数値や考察の方向にズレが生まれやすい
◆最初に伝えたい軸を一文で決め、抄録の項目ごとにスライドの骨組みを作る
◆数値と図表は提出前に確定させ、スライドでも同じ値を使う
◆文字数はその学会の数え方で確認し、削るのは結論以外から
◆新人発表こそ、コミュニケーションを取りながら骨組みの段階で指導者に見てもらう
抄録とスライドは、同じ設計図の表と裏です。
準備の順番を変えるだけで、発表の中身まで変わってきます。
まずは今日、発表したい症例について『この症例で何を伝えたいか』を一文だけ書き出してみてください。
それが抄録とスライド、両方の出発点になります。

まずは伝えたい軸を一文で書いて、そこから抄録とスライドの骨組みを同時に作ってみてな。
手間かもしらんけど、この方法が最終的にまとめやすいで。
そして一人で抱えんと、骨組みの段階で誰かに見てもらうのが一番の近道やで。
見てくれる人がいるかどうかで、準備の負担も発表の手応えも変わります。
自分が学べる環境にいるかも、一度見つめ直してみてください。
【あわせて読みたい(学会発表シリーズ)】
発表準備についてまとめています。
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